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研究内容

メコン川流域/ラオスの教育に関する研究 Reserach on Education in Lao PDR

インドシナ定住難民に関する研究

多文化共生共育・インクルーシブ教育に関する研究Multicultural Education and Inclusive Education

アセアン諸国のOOSCYに対する研究

研究内容の詳細

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メコン川流域/ラオスの教育に関する研究
Reserach on Education in Lao PDR

 特に経済的・社会的に不利な境遇に置かれているマイノリティ(少数民族)の教育アクセスを改善することに関心を持っています。例えば少数民族Hmongは、交通インフラが行き届きにくく、現金収入に結び付く仕事が少ない山岳地帯に住んでおり、村の予算も極めて限定されています。そのため村の予算では学校を建設することが難しいという事情があります。その上、子どもたちは家庭でHmong語を話すのに、学校では国語であるラオス語で勉強する必要があるので、留年したり中途退学したりするケースが多いです。これらの状況を改善すべく現地で聞き取り調査を行ったり、実際に山岳地帯の学校で教壇に立って子どもに生じる教育格差の現状とその格差を埋める手法について研究を続けてきました。 この他にも、教員養成、市民性教育、高等教育など幅広い視点で、ラオスの教育に関するあらゆる研究を行っています。近年は、ラオスからタイに移動する子どもたちへの教育支援や人身取引の予防教育についても研究を深めたり、学校に行けない子どもたちについての現地調査を進めてきました。研究のアプローチとして、主に現地の人々と関わり、関係を深めながら直接対話をする定性調査法を重んじています。近年は、ラオスに限らず、タイやカンボジアでもフィールドワークや調査を行っており、特に、メコン川流域の労働移動と子どもの国際教育支援ネットワークについて調査を行いました。

My research is focused on improving education access of ethnic minorities who are placed in economically and socially unprivileged situation. For instance, Hmong, ethnic minority in Laos, lives in the mountainous area where infrastructure of transportation, opportunity of income generation activities and the budget of village are extremely limited. Therefore, it is difficult to build and maintain schools in the mountainous village. Moreover, in the minority village, there are many cases of dropout and repeat because minority children, who have their own mother tongues, have to study in “Lao” which is the national language. As a researcher, I have researched on strategies to fill the education gap by conducting interviews and teaching at minority populated school in the mountainous area.

 

Furthermore, my research is engaged in wide range of education issues such as teacher training, citizenship education and higher education. In recent years, my research interest is in educational assistance to the cross-border children(Lao-Thai) and education which prevents children from human trafficking as well as Out-of-School Children and Youth (OOSCY) As a research methodology, qualitative research is majorly adopted because it highly requires interaction and close encounter with the local people.

 

Currently, I was given a great opportunity to expand my studies in Thailand and Cambodia since labor migration is active in GMS(Great Mekong Sub-region). Hence, I'm focusing on collaborating with some international network for the benefit of the cross-border children.

科研費に採択された「タイの外国人児童に対する国際教育支援ネットワーク形成に関する研究(基盤研究C:2013-2015年度)」については、第50回日本比較教育学会(2014年8月)で報告しました。 タイトルは、「メコン川流域における労働移動と 教育支援ネットワークの形成 ―タイ・ラオス・カンボジアを中心として― 」です。 ラオスやタイでは自国で働くよりも、より労働条件が良いタイで就労する人が多いです。就労年齢は、低年齢化しており、子どもが児童労働、人身取引などの対象になっていることから、特にラオスではNGOが中心となって、人身取引防止のための教育プログラムを開発したり、啓発活動を行っています。もはや労働のために国境を越えることを防ぐことが難しいため、大人に対してはSafe Migration(安全な移動)について教えるプログラムがあることも分かりました。本科研については、最終報告書も出版しております。

 近年は、再びラオスの山岳地帯における教育格差の現状や格差をもたらす要因について追究をしております。最近の研究につきましては、「研究業績」のページをご覧ください。

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多文化共生共育・インクルーシブ教育に関する研究
Multicultural Education and Inclusive Education 

ラオスや米国から帰国後、日本においても日系南米人やインドシナ難民などのマイノリティが増えていることに気づき、日本に住むマイノリティの子どもたちの教育支援につながる研究をしています。日本は多文化化しており、実に多くの外国人児童生徒が日本の学校に在籍しています。また外国人に限らず、学校には様々な背景を持つ子どもたちがそれぞれの事情を抱えながら学校に通っています。そのような子どもたちを学校でどのように受け入れ、教育支援ができるかについても実践的な研究を試みています。多様な背景を尊重し、どのように地域で包括していくことができるかという視点で考えると、まず外国人の子どもが教育を受ける機会を作ることが大切だと感じています。

 多文化共生教育については、特に神戸市や姫路市にある外国人児童生徒のための学習補助教室に関わり、ゼミ生や受講生が学習支援ボランティアとして子どもたちの勉強を手伝うという実践を通して、教育支援に貢献することを試みています。

After returning from the US and Laos, I noticed that many newcomers from South America and Indochina refuges, from Cambodia, Laos and Vietnam have settled in Japan, and their second generation have had hard time to continue their education. Therefore, my research is also focused on education assistance for those minority children. In fact, Japan is becoming a multicultural society with a number of newcomer children who needs instruction of Japanese language. Inline with my priority is not to limit my research with the newcomers, since, there's a significant number of children who needs special treatment due to their own background that affects their learning abilities. Reflecting on these diversities, I highly considered applying practical studies on how these children will be accepted at schools, including the assistance we could offer with their backgrounds in mind. My research interest lies how we can respect and appreciate the different backgrounds of people and how we can include them in the local areas. Considering this aspect, it is important for them to continue the education.

As practical actions, our seminar students are involved in NPO and study group as volunteer teachers in Kobe and Himeji city where newcomer children are highly populated. Through the volunteer teaching work, we are challenging to contribute to education assistance in the local communities.

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ニューカマー生徒の進学問題に関する研究

日本ではいまだ外国人児童生徒(ニューカマー)が高校に進学することは極めて難しい状況であり、日本学術会議(2020年)の報告においても、外国人生徒の高校進学率は60%台にとどまっていると指摘されています。この理由は、家庭の経済状況、日本語能力、学力の問題もありますが、日本の高校入試制度の難しさが主要な原因でもあります。外国人生徒にとって高校入試の壁は厚く、乗り越えることができずに進学をあきらめる生徒が後を絶ちません。この状況をいかに乗り越えることができるか、どのような教育制度が望ましいか明らかにするために、外国人支援NPOや外国人生徒本人、保護者に聞き取りをして、その結果を提言にまとめています。

 入学制度に焦点を置くと、特にニューカマーが進学しやすい入試制度を持つ大阪府の教育支援には学ぶべきことが多いと感じています。神戸市や姫路市で自分が関わる外国人の子どもたちが、高校に進学し、日本人生徒と平等な教育機会を持てるようするために研究を進めています。

In Japan, it is still difficult for newcomer students to proceed to high school and continue their education.  According to the survey reported by   the Science Council of Japan (2020), proceeding rate of newcomer students to high school is approximately 60% in contrast to 96.5% that of Japanese students. These are attributed mainly to financial restriction of families, Japanese language proficiency, as well as academic ability. Moreover, it was also caused by the complicated high school admission system. As newcomer students are also required to pass entrance examinations to enter public schools as same as Japanese, quite a number of students give up on reaching the academic level. My research and practical action have focused on investigating how to overcome these situations and how the education system can be changed. I do this by conducting interviews with the stake holders such as newcomer students, parents and NPOs who provide assistance with them.

 Through years of my research, I have grown a specific interest on the “quota entrance system” which offers special treatments to newcomer students in the admission. In fact, 16 prefectures including Osaka, Kanagawa and Tokyo have offered “quota entrance system” in order to provide opportunities for newcomer students to enter high schools.

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インドシナ定住難民に関する研究

勤務大学が位置する兵庫県姫路市には多くのインドシナ定住難民が暮らしています。1996年末に米国より帰国してから、日本に住むインドシナ定住難民に関わるようになりました。きっかけは、私が米国でラオスからの難民の教育支援に関わっていたからです。

 かつてインドシナ難民の定住促進センターがあった姫路市周辺に住むラオス定住難民のコミュニティとは世代を超えた関係を続けており、彼らが抱える問題を共有したり、解決に向けた実践を共に行い、定住難民が住みやすい社会づくりに向けた研究を深めています。彼らとの付き合いも25年を超えました。特に定住難民者の子ども(世代2)がどのように日本で教育を受け、日本社会に受容されているのかについて関心を持って調査をしてきました。

 

 近年、第1世として来日した定住難民は高齢化しており、近年では健康問題や帰化するか否かについて悩む姿が見られます。これまで長期にわたって定住難民と関わってきた中で行った調査研究や、多文化共生を目指す提言について著書などにまとめております(業績欄参照)。

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アセアン諸国のOOSCYに対する研究

 2018年4月に科学研究費「アセアン諸国のOOSCYに対する国際教育支援ネットワークに関する研究」が採択されて以来、ラオス、カンボジア、インドネシア、タイのOOSCY(Out of School Children and Youth:学校に行けない子どもたち)の研究を続けてきました。
 この研究で明らかにしたいことは大きく2 つあります。
 第一に、対象の各国においてOOSCY とはどのようなグループの子どもたちか、またなぜ就学できていないのか、就学しても学校を辞めてしまう場合、その理由は何なのか、辞める理由をどのような方法で打開できたかについて明らかにすることです。そして、アセアン宣言の7つの原則がどの程度達成できているかについて現地調査をもとに分析を試みることです。
 第二に、OOSCY の問題を解決方策としてどのような国際的な教育協力ネットワークが構想されているのかを、アクター間(政府、国際機関、国際・現地 NGO)の連携に注目して明らかにすることでです。以上の2 点が明らかになれば、OOSCY の問題を解決するために、アセアン共同体のような地域統合が有効であるかどうかについても明らかとなることが予想されます。同時に、アセアン加盟国との関係が深い日本に対しても、国際教 育支援に関わる最適なあり方を提案できることに実践的な意義を見出すことができます。
 2020年以降、海外渡航ができなくなった現在でも現地コーディネータの力を借りて情報を収集し、学会などで積極的に発表を進めております。これまで、日本比較教育学会や数々の国際学会で発表を終えました(The 6th International Conference on Lao Studies: Cornell University,  The 10th World Education Research Association :WERA: Gakushuin University)。中間報告書は、下記からダウンロードして下さい。
 採択期間が終了した2021年度も、第57回日本比較教育学会(課題研究Ⅱ)、CESA(Comparative Education Society of Asia, 12th Biennial Conference)、CIES(The Comparative and International Education Society)で個人発表およびパネル発表を行い研究結果を公表しました。さらに、科研全体の研究成果は『比較教育学研究』第64号に特集として掲載されました。2022年12月には東信堂より書籍として出版する予定で、最後の調整を進めております。

OOSCY中間報告書(PDF4.30MB)

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